クラゲには目がある!?脆弱な見た目に隠された真実を追え!!

※扉写真はBielecki et al., (2014)より引用

「クラゲには目がある。」

え?と思った方。まだまだクラゲの奥深さを知らないようですね( *´艸`)
(煽り口調ですみません…。)

本日はクラゲ類の中でも最も目が発達していると言われている「箱虫綱」をお話の軸として、
クラゲの不思議な生態についてお話していこうと思います♪

そもそも箱虫綱とは、
アンドンクラゲ、ハブクラゲ、ヒクラゲを始めとする傘の形が箱状のクラゲ達の総称です。

NCB 2016_4869

写真はアンドンクラゲ

猛毒の刺胞細胞を持つことから、毎年多くの刺傷被害が確認されている本種ですが、
研究者から注目されているのはその刺傷被害のみではありません。
→何故多くのクラゲは毒を持つのに、刺すクラゲと刺さないクラゲがいるのか?
その秘密が知りたい方は此方の記事をcheck!!

それは、「発達した目」です。

目の名前は「ロパリウム」。

扉写真 Gram et al., (2011)

Gram et al., (2011)

・薄い角膜
・細胞性のレンズ
・ガラス体腔
・視細胞が配列する網膜まで存在する極めて高性能な眼です。
頭足類(イカやタコ)・脊椎動物顔負けの目となっています。
しかもこの様に「ひさし」と呼ばれる、人でいう所の瞼(まぶた)にあたる部分も存在します。
(このひさしの大きさが種同定に用いられる場合もあります。)

ひさし ロパリウム

ピントをずらす事で目の上に瞼上のひさしがある事がよく分かりますね♪

このロパリウムですが傘の縁の中心に存在する為計4個存在し、
細かく分けると上部レンズ眼・下部レンズ眼・ピット眼・スリット眼が存在します。

ロパリウム Nilsson et al. (2005)   Nilsson et al. (2005)

1つで6つの目を持ち、それが4対。合計で24個の目が存在する事になります。

また、ロパリウム下部に存在する平衡石(Statolith)と呼ばれるもので重力を感知し、
自身が遊泳している向き等を把握できていると考えられています。

この眼点ですが先行研究により色彩が分かるほど発達はしていないが、
色の明暗を判断するには十分すぎるほど高性能である事が判明しており、
この様に光に対して反応し、光に集まる姿が確認されています。

18256

よってこの種を採集する際には、集魚灯等を用いて採集を行うと効率的に出来ます♪
裏を返せばクラゲが出現する時期にダイビングして水中ライトを使うと、
集まってくる危険性もあります…。これからの時期ダイビングを行う方はご注意ください!!
前回行ったイベントに参加した方は身をもって体験出来たかと思います( *´艸`))

先行研究による飼育実験では中明度の水槽に高い確率でぶつかってしまう所を、
白・黒といった高明度の水槽壁面前では高い確率で回避行動を取り、
通常よりも長期間飼育出来た例が報告されています(Ueno et al., (2000))。

Ueno et al., 2000高明度の水槽壁にはぶつかる確率が低い事が分かります。

つまり自然界で高明度な場所である堤防や停止船舶・浅瀬底といった
自分の体が傷つく様な場所へと近づくと、
その場所から回避するのにロパリウムは非常に役立っている事が考えられ、
一方で水中の中明度である障害物が少ない環境では通常通りの遊泳行動を示す事が考えられています。

またTripedalia cystophoraと言うマングローブに生息する種においては、
正の走行性のあるcopepodaの一種が優位に胃内容物から観察されており、
ロパリウムは自然下で生きる上で非常に役立っていると考えられています(Buskey 2003)。

copepoda画像引用元:http://www.ub.edu/crba/practiques/artropodes/artropodes4/artropodes4.htm# 
https://en.wikipedia.org/wki/Copepod

小型動物プランクトンの一種。クラゲのみで無く、多くの稚仔魚の重要な餌となっている。

如何だったでしょうか?
クラゲに目があるだけではなく、ここまで高度な眼であるとは思いもしなかったかと思います!!
私も初めて知った時は本当に興奮しました笑

また今回は箱虫綱を取り上げてお話ししましたが、
他の綱のクラゲにおいても光に対する応答は確認されており、
その目に当たる器官が傘の縁に多数確認されています。

もしかしたら私たちの目はクラゲから来ているのかもしれませんね♪
明日から足をクラゲに向けて寝られない…汗

それではまた次の投稿でお会いしましょう(^^♪

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