こんにちは!
今回も助手のばすてが書かせて頂きます!
今日は水族館でおなじみのクラゲ、カラージェリー Catostylus mosaicus についてお話いたします。
- Class: 鉢虫綱
- Order: 根口クラゲ目
- Family: Catostilidae 科
- Genus: Catostylus 属
カラージェリーはオーストラリア西部の沿岸からフィリピン沿岸までに生息しています。
水族館にはたくさんいますが、実は日本では見られません…。
かわいいから日本にも居てほしかったです…(笑) もうちょっと頑張って沖縄くらいまで来てくれても…。
このカラージェリーが日本の水族館に初めて来たきっかけはなんと発注ミスだったと言われています。
水族館へ生体を販売する業者さんが「タコクラゲ」を発注したところ、
送られてきたクラゲがカラージェリーでした!
根口クラゲなあたりは似てなくもないけど…見た目全然違いますよね!? 模様とか、付属器とか…
しかし、真ん丸な形とカラフルな色が可愛かったためその後水族館の人気者となり、今では業者さんの主力商品のクラゲなんだとか。
見た目が可愛くて得したパターンですね~汗
カラージェリーといえば、先ほども出てきましたが カラフルな色 ですよね!
白や水色、濃い青、暗い茶色… う~ん丸くてなんだか美味しそう…
この色、どうしてバリエーションがあるか分かりますか??
シンキングタイム!
・・・
・・
・
正解は・・・
分かっていません!!!
理由を思いついた人は調査してみてね ♪
…というのはさすがに投げやりすぎるので、現在までに分かっていることをご説明します。
まず、茶色タイプは 褐虫藻 が共生しているためだと言われています。
青色のボディに褐虫藻の茶色が合わさってかなり濃い色になっているのではないでしょうか。
また、2005年に発表された論文(Dawson et al., 2005)では、
オーストラリアの2つの地域に出現するカラージェリーについて、形態とDNAの部分塩基配列の比較を行った結果、
カラージェリーを2つの亜種に分けて報告しています。
茶色または青色で、バス海峡周辺に生息する Catostylus mosaicus mosaicus と、
青色または白色で、ニューサウスウェールズやクイーンズランド周辺に生息する C. mosaicus conservativus 。
・・・青色どっちにも入ってない??
比較を行ったのが形態(体の構造など)とDNAで、2つの地域両方に青色のカラージェリーが生息していたのでこうなったようです…
ということは、色は遺伝的じゃなくて環境で変わるのかも…?
この論文内でもニューサウスウェールズのカラージェリーについて、
青色は湾口に多く、白色は河口に多い傾向にある(かも) とされています。
(実際の報告は別の私信のようです)
ですが、検証が不十分で詳しい事は分かっていません…。
水族館にたくさんいるのに、色が違う理由が実は分かってないってすごく面白くないですか!?
コロコロと大福みたいに可愛いだけかと思いきや、ミステリアスな一面も…。
このミステリアス可愛いカラージェリー、ずっと見てると美味しそうな気がしてきます…。
食べたくなっちゃうな… と思った方! 大丈夫です!
食べられます!!
カラージェリーは食用クラゲとしても漁獲されているそうですよ~
(ただ、日本でカラージェリーが流通しているかは謎です…。以前スーパーで買ったクラゲにフィリピン産の物もあったのでもしかしたらあるのかも…?)
食用クラゲとして日本で流通しているクラゲは
主に、ビゼンクラゲ、ヒゼンクラゲ、カワイトヒキクラゲ、キャノンボールジェリー、アオヘルメットクラゲなどです。
びっくりするような名前のクラゲもいますね…!
ビゼンクラゲは日本でも漁獲されていますが、多くは東南アジアで漁獲されています。
東南アジアでクラゲをとっている方々は細かい種類までは見ていないようで、研究者が見に行ったら新種だった!なんて事も…。
そんな、サラダや中華料理に使われているクラゲ、コリコリして美味しいですよね!
私はキュウリとほぐしたササミと一緒に食べるのが好きです…。
ところで、泳いでるときはふわふわ・ぽよぽよのクラゲが、コリコリなサラダのクラゲになるのって不思議じゃないですか…??
生で食べるとぬるぬるで全然コリコリしないんですよ~!(絶対にマネしないで下さい!!)
クラゲを「サラダのクラゲ」にするには、塩蔵法という加工が行われます。
作り方は以下の通り!
*---*---*
①クラゲを傘と口腕に分けて淡水でよく洗う。
(口腕の方は刺胞が残りやすいので、特に丁寧に!)
②食塩とミョウバンを9:1で混ぜた粉末(ミックス)を、クラゲの重さの10分の1強を混ぜて3,4日つけておく。
その後新しい容器にクラゲを移してミックスに少量のミョウバンを足して混ぜる。これを2,3回繰り返す。
③塩漬けにしたクラゲを積み上げて室温で2日間乾燥させる。
時々混ぜて均一に乾かし、自重で水分が染み出るので取り除く。
水分が元の60~70%くらいになったら完成! 塩抜きして料理に使います。
*---*---*
Hsieh et al., 2001を参考にしました。
今度クラゲを見つけたらやってみたいです…!
食塩は水分を抜くために入れますが、コリコリの食感を生み出すのがミョウバンです。
ミョウバンはタンパク質を凝固させる作用を持つので、これがふにゃふにゃのクラゲの身をコリコリにします。
ミョウバンのこの作用は獣皮のなめしにも使われています。皮をなめす方法でクラゲを食べようを思った人、すごい…!
若干話が脱線気味ですが、、、
カラージェリーを塩蔵にしたら色が残るのか疑問ですね??
青いサラダクラゲ… インスタ映えメニューになりそう…!(?)
もし機会があったら作ってみたいですね!
ちなみに丸くてかわいいカラージェリーですが、若い時(エフィラ)の姿はこんな感じです!
縁弁(一番外側の部分)にあるギザギザが特徴的ですね!
このギザギザは他の根口クラゲもエフィラの時期に持っている種類もいますよ~。
メデューサの時のころころと可愛い姿とは裏腹に、エフィラの時期は結構尖ったヤツなんです・・・。
*メデューサやエフィラって何だろう?という方はこちらの記事もぜひご覧ください!*
「クラゲの特徴【鉢虫綱】」
今回はカラージェリー Catostylus mosaicus についてお話いたしました。
水族館で何気なく見てる他のクラゲにも、実は色んな秘密が隠されているかも…。
最後までお読みくださりありがとうございました!
参考文献を記しておきますので、もっと知りたくなった方は読んでみてくださいね♪
【参考文献】
リサ=アン・ガーシュウィン『世界で一番美しいクラゲの図鑑』X-knowledge(2017)
クラゲの種類毎の解説だけでなく、生活史や体の器官、系統関係の解説もイラスト入りで分かりやすいので入門にオススメ!
日本語で書かれているのも読みやすくて良いです。
Gerhard Jarms and Andre C. Morandini 『World Atlas of Jellyfish』(2019)
鉢虫綱・箱虫綱のクラゲが網羅されている図鑑です。2019年に出版されたばかりなので情報も新しいですよ~!
記載論文も記されているのでしっかり調べたい時に重宝します。
大きいのでちょっと勇気が必要なお値段ですが、1冊で2綱を網羅できると考えたら安い(?)
株式会社エヌ・ティー・エス『生物の科学 遺伝』2020 No.4
この号はクラゲ特集で、専門書ですが読みやすく書かれているのでオススメです♪
水族館にカラージェリーが来た経緯について参考にしました。
Dawson, Michael N. “Morphologic and molecular redescription of Catostylus mosaicus conservativus (Scyphozoa: Rhizostomeae: Catostylidae) from south-east Australia.” JMBA-Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom 85.3 (2005): 723-732.
カラージェリーの2つの亜種についての論文です。
Hsieh, YH Peggy, Fui-Ming Leong, and Jack Rudloe. “Jellyfish as food.” Jellyfish Blooms: Ecological and Societal Importance. Springer, Dordrecht, 2001. 11-17.
食用クラゲの作り方を参考にした論文です。
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