みなさんこんにちは!
クラゲ屋です(^^♪
早速ではありますが、みなさんに質問です。
1954~2010年にかけて、どれほどの人間がクラゲ毒により亡くなっているのか、
みなさんはご存知でしょうか?
(Chironex fleckeri , Carukia barnesi , Chiropsolmus quadrigatusの3種のみを対象とする。)
正解は…。
5,568名です。
恐ろしい数だと思いませんか?
私も初めて見たときは驚きを隠せませんでした…。
この数字は現在もなお伸び続けており、年間で40名ほどが
クラゲによって亡くなっていると言われております。
これほどまでに医療の発達した現在であっても、多くの方々が亡くなっているのです。
クラゲの毒が危ないという認識は、多くの方が持ちあわせているかと思います。
しかし、「なぜ」危険なのか、刺されると「どの様な」症状が起こるのか。
そして、どの様な対処が一番適切なのか。
これについて知っている方は少ないかと思います。
そこで今回は、
・そもそもクラゲ毒とは?
・刺されるとヒトの体にはどの様な症状が起こりうるのか?
・刺された際にはどの様な対応を取るべきなのか?
これらについてお話していければと思います!!
そもそもクラゲ毒とは?
クラゲの毒に関する研究が本格的に行われ始めたのは約100年前であると言われております。
しかし毒の単離の難しさ、単離・精製後に活性を保つことが難しいという背景から、
本格的な研究が始まったのは約30年前からと、クラゲ毒に関する理解が進み始めたのは
かなり最近であると言って良いでしょう。そのためクラゲの毒に関してはまだ多くの謎があり、
目下調査が行われております。
現在クラゲ毒からは大きく分けてペプチド毒とタンパク質毒の2種類が発見されています。
それぞれ異なる特徴を持ち、どちらも強力な毒であるといってよいでしょう。
それではこれらの毒が体内に侵入すると、具体的にどの様な影響が出るのか、
そしてどのクラゲに刺されることによって起こるのか、箱虫綱をメインに見ていきましょう!!
刺されるとヒトの体にはどの様な症状が起こりうるのか?
1. アンドンクラゲ Carybdea brevipedalia
分布:日本沿岸・韓国の東海岸
出現時期:主に夏期(6~10月)
刺傷時の症状:刺傷部から広がる激しい痛み、紅斑、丘疹
恐らく、国内において最も刺傷被害を起こしているであろうクラゲになります。
夏のお盆時期の海を危険にしているのはこやつです!!笑
現在、本種においては溶血活性を示す 2 種類のタンパク質性毒素
CrTX-A、CrTX-Bという毒素が発見されています。
引用論文:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X00933539
このうちCrTX-Aにおきましてはマウスを利用した毒性調査がされており、
静脈内への投与実験では、20mgkg-1の量を投与後約40分に死亡が確認され、
また腹腔内投与実験では、100mgkg-1の量を腹腔内投与すると
約8時間後に死亡が確認されています。
つまり毒の量によってはヒトの命を脅かしかねないという事です。
私は何度も刺されておりますが、だんだんと蚯蚓腫れが酷くなってきている気が…。
くれぐれも皆さんは刺されないようにして下さい!!
現在のところ死亡例は確認されていませんが、十分に注意が必要なクラゲですね。
2.ハブクラゲ Chironex yamaguchi
分布:亜熱帯(日本では沖縄・奄美諸島など)
出現時期:主に夏期(5~10月)
刺傷時の症状:刺傷部から広がる激しい痛み、腫れ、ケロイド化
意識混濁、呼吸抑制、不整脈、最悪の場合は死亡
写真引用元:http://do-butsu.com/209/.html
さて、刺傷時の症状の欄が急に物騒になりましたね…。
ハブクラゲはアンドンクラゲとは異なり、公式な記録のみでも3例の死亡被害が確認されており、
いずれにおいても幼い子供の命が失われていることが判明しております。
本種はアンドンクラゲとは異なり、神経毒も持ち合わせます。
これにより意識混濁・呼吸抑制・不整脈といった、
脳・心臓・腎臓に直接的な影響を及ぼす症状が確認されています。
しかし確認されているタンパク質性毒素CqTX-Aの毒性の高さは、
アンドンクラゲに比べると低いことが判明しております。
引用論文:https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbb/66/1/66_1_97/_article/-char/ja/
しかしながら触手の本数がアンドンクラゲに比べて7倍多く、触手も太いことから
一度に注入される毒の量が他種に比べ多いことが分かっており、
これがヒトの体を強く刺激し、急激でヒトの体が耐えられないほどの反応である
アナフィラキシーショックが起こり、死亡するリスクが高いことが分かっております。
私が刺された際には強い痛みと冷や汗を掻きました…。
毒が強い=死亡例とは限らないという事ですね。
3.オーストラリアウンバチクラゲ Chironex fleckeri
分布:オーストラリア北部やインド洋の熱帯沿岸域
出現時期:主に夏期(4~8月)
刺傷時の症状:刺傷部から広がる激しい痛み、ケロイド化
壊死、高血圧症、心停止、腎臓への負担、
最悪の場合は死亡
写真引用元:http://libutron.tumblr.com/post/102361178612/popsealife-heartstopper-the-box-jellyfish
「殺人クラゲ」と言われてこのクラゲの名前を思い出す方、多いのではないでしょうか?
本種は現在までにCfTX-1、CfTX-2、CfTX-A、CfTX-Bの4種類が確認されており、
どの毒素も非常に強力である事が分かっております。
引用論文:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0041010107002280
このクラゲに刺された際に一番危ないのは、高血圧です。
引用論文:http://www.jbc.org/content/289/8/4798.full.html
マウスを用いた実験では、投与後約30分後には血圧が2倍以上に上昇し、
脳・心臓・腎臓に恐ろしい負荷を与えることが判明しました。
また成熟時の個体はハブクラゲよりも大型であり、非常に危険性が高いです。
4.カツオノエボシ Physalia physalis
分布:世界中の沿岸域
出現時期:主に春から夏(3~8月)
刺傷時の症状:刺傷部から広がる激しい痛み、紅斑、ケロイド化
呼吸困難、不整脈、腎臓の損傷、最悪の場合は死亡
写真引用元:https://www.flickr.com/photos/70372098@N08/6385269673/in/set-72157628101775127/
※厳密にはクラゲと定義するのは難しいですが、今回はクラゲ類の紹介という事で…。
このクラゲが大量発生する時期に似たような名前で「カツオのカンムリ」というクラゲが
存在しますが、それとは異なるクラゲです!!カツオのカンムリも猛毒なのでご注意を!!
右図 写真引用元:https://oceanexplorer.noaa.gov/explorations/02sab/logs/aug15/media/man_o_war.html
左図 写真引用元:http://greatlife.livedoor.biz/archives/1008182499.html
春になるとこのクラゲが主に欧州の地域で大量発生に関する記事を
よく見かける方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この種からはまでにPhysalitoxinと呼ばれる毒素が確認されております。
引用論文:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0005279581900696
※お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、毒素の名前は学名が由来です。
なお本種は他のクラゲ類よりも遊泳能力が乏しく、風向により移動経路が決定します。
そのため風向きによっては海岸に大量に接岸し、
ビーチの閉鎖といった被害を度々おこすなんて事も…。
観光業界からすると、目の上のたん瘤のような種となります。
私は一度このクラゲの触手を間違えて踏んでしまい、非常に痛い思いをしております…。
みなさま、海岸を歩く際には足元に気を付けて!!
5.イルカンジクラゲ Carukia barnesi
分布:インド洋、太平洋、オーストラリア北部
出現時期:主に冬から春にかけて(10~4月)
刺傷時の症状:イルカンジ症候群
全身の痙攣、発汗、頭痛、嘔吐、過呼吸、高血圧症、大脳の浮腫
写真引用元:http://www.ucmp.berkeley.edu/cnidaria/C_barnesi.html
このクラゲも近年多くのメディアに取り上げられている「殺人クラゲ」ですね。
最大の特徴は何といっても体の大きさに対する触手の長さ。
傘の大きさは僅か1~2cm程しかありませんが、触手の長さは何と60cmを超えます。
よって目視で見つけることは不可能に等しく、気が付けば刺されている例が殆どです。
現在までに7例の死亡被害が報告されていますが、
本種が出現する場所にて起こった溺死事故の多くに
本種が絡んでいるのではないかと考えられています。
本種の毒の特徴はなんといっても「イルカンジ症候群」を引き起こすことにあります。
引用論文:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378427404004151
本種とは異なり、持つ毒素の種類が神経毒である事が分かっております。
この神経毒は、刺されてから体に影響が出るまでの速度がとても早いことが特徴であり、
マウスを用いた実験では、投与後約1分後には血圧の上昇がみられる事が分かっております。
つまり、高血圧性緊急症の薬剤として用いらている「フェントラミン:効果発現:1~2分」
を直ぐに用いたとしても、症状は大なり小なり出るかと思われます。
よって1人の時に刺されると正常な対応が極めて困難です。
まさに最悪のクラゲでしょう。
このようにクラゲの毒は様々な特徴を持ち、どれも非常に危険性が高いものとなっております。
そして、どのクラゲに刺された場合でも迅速な対応が必要であるかと思います。
それでは私たちはどの様な対応を取るべきなのでしょうか?
刺された際にはどの様な対応を取るべきなのか?
それでは刺された際の対応法を学びましょう♪
…と言いたい所ですが、まずはしっかりと対策が行われている海水浴場を選びましょう!
近年ではこのようにクラゲ侵入防止用ネットを張っている海水浴場が多く存在します。
これは予防という意味では非常に重要な第一歩です。
少しでも安全に海で遊びたい場合には、事前に対策の練られた海水浴場で遊びましょう!
写真引用元:wikipedia
そして次に、
抗ヒスタミン剤、を持ち歩きましょう!!
写真引用元:http://usnichijo.seesaa.net/article/benadryl-itch-stopping-cream.html
これは刺された後に非常に役立ちます。
近年では「お酢や重曹」を持ち歩きましょう!とよく言われておりますが、
クラゲによっては悪化に繋がりかねません。
ましてや素人がどのクラゲに刺されたかを判断するのは非常に難しいかと思われます。
よってクラゲに刺された際には、
①刺された部分を丁寧に海水で洗い流す。
※間違っても直接搔いたり、淡水をかけて剥がそうとしないこと!
射出が起こり余計被害が広がるので注意が必要です!!
※刺される仕組みは此方で詳しく説明してます!
⇒クラゲに刺されると何故痛い!?最新の研究報告から解説します。
②最寄りのライフセーバーへの相談、病院への急行
※この作業が出来ない場所であるときに抗ヒスタミン剤が役立ちます。
これが最も正しい流れとなるかと思われます。
終わりに
如何だったでしょうか?
今回は紹介できませんでしたが、
日本においてはヒクラゲ、アカクラゲ、キタユウレイクラゲ、カギノテクラゲ
などにも十分な注意が必要です。
また対策として行われているクラゲネットの設置は、
ちぎれた触手片などまで防ぐことまでは考えられてられません。
さらに海外では当たり前である、
酢や重曹の設置においては殆どの場所で行われておりません。
残念ながら、日本においてはまだまだクラゲに対する認識に誤認や、
浅学さが多いのが現状です。
さらにこれらのクラゲ類はまだまだ多くの部分が謎に包まれており、
重要な生活史に関する研究などが進まないと具体的な対応策が練りにくいのも現状です。
美しく幻想的な反面、非常に危ないクラゲたち。
私たちは今こそ、クラゲ達との適切な距離感を覚えることが大切なのかもしれませんね。
また次の投稿でお会いしましょう(^^♪
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