※今回の記事は前回の記事の続きとなります。
前回の記事を読んでいない方は此方をClick!!
皆様お待たせしました!
前回の記事で告知しておりました大量発生の鍵を握る現象
「ストロビレーション」
今回は最新の研究成果より発見された
ストロビレーションのメカニズムに迫る研究をお伝えできればと思います。
それでは早速覗いてみましょう( *´艸`)
※今回紹介する論文で対象種とされているのはミズクラゲです。
1,身近な薬が大量発生の原因!
URL:http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1271/bbb.120076
皆さんはインドメタシンという物質をご存知でしょうか…?
関節痛や腰痛に良く効くあの有名な薬です。
実はこの物質が近年ポリプのストロビレーションを誘引することが判明したのです!
前回の記事でお伝えした通り、一般的にストロビレーションを誘引する為には
一定期間の水温変化が鍵となる場合が多い事が判明しています。
しかしこのインドメタシンを用いると、水温変化無しに、
しかもかなりの短期間(変態開始から遊離まで通常の約5倍の速度)で
誘引出来る事が判明したのです!!
この実験では遊離までに55日掛かっていますが、
インドメタシンを用いると10日前後で遊離しているのが分かります。
発見された経緯は諸説ありますが、未だにインドメタシンの何が鍵となり
ストロビレーションを引き起こすかは判明しておりません。
しかし、仮に誘引物質を特定することが出来れば、遊離の難しいクラゲも
簡単にエフィラの姿で拝むことが可能になるかもしれませんね(^^♪
2,ついに解明!ストロビレーションを誘引する遺伝子の特定!!
URL:http://www.cell.com/current-biology/pdf/S0960-9822(13)01522-4.pdf
※2,の記事は一部OISTの記事を参考にしています。
この研究はコンスタンチン・カールツリン研究員と
ドイツのキール大学動物学研究所との共同研究によって発見されました。
この研究ではまず横分体の部分を、変態していないポリプに与えることから始まりました。
すると驚くことに、
横分体を与えたポリプは温度変化無しにストロビレーション起こすではありませんか!!
この事から研究者たちは以下の仮説を唱えました。
「横分体から出た何かしらの物質が変態を促進させたのでは?」
そこで研究者たちはこの手がかりを元に原因遺伝子の特定を行う為に、
段階ごとに変態したポリプ及び横分体の部分を調べました。
そこで発見されたのが3種類の遺伝子でした。
「CL390」,「CL112」,「CL631」
特にCL390と名付けられた遺伝子は
横分体形成時に発現
↓
水温が下がると発現のスイッチがオン
↓
低温状態が続くと発現が強くなる傾向を持ち合わており、
赤の色の強さは発現量の違いを表します。
画像から、変態が進むにつれて色が鮮明になっていくのが分かります。
つまりCL390は、
ポリプがエフィラを遊離するのに重要な全ての条件を満たしていたのです!!
(因みにCL390の発現量が一定以上あれば変態の起こらない高温下でも変態を起こすことが確認されています。)
実は1,で話したインドメタシンの芳香環の構造が、ここでお話ししたCL390の転写産物の芳香環の構造と似ている部分があるため、インドメタシンを投与するとストロビレーションするのではないかと考察されています。
またこの遺伝子のお陰で、ポリプは餌の少ない時期に変態するのを防ぎ、
冬の水温を十分に感じると変態の時期を知らせる一種の「目覚まし時計」的な
役割を果たしている事も考えられ、
春先にミズクラゲが多くみられる謎を解明することに成功したのです!!
しかも今回の研究者たちは、ポリプからクラゲへの変態には全ての生物の発生に
必要不可欠なレチノイン酸がCL390遺伝子の発現をコントロールしている事も突き止めました。
引用元:wikipedia
これは高等生物と同じ発生メカニズムを、クラゲの様な単純な動物内にも残されていることを示す
結果となりました。姿形は違えど、根源が同じである事を感じさせますね…。
この研究結果は変態メカニズムを解明するだけに留まらず、
大量発生しない様に事前にコントロールされたポリプ群の形成など、様々な応用が期待出来ますね( *´艸`)
何時かアンドンクラゲの刺傷被害に悩まされなくても済む日が来るかも…。
如何だったでしょうか?
これはあくまでもミズクラゲのみでのお話。
彼らの全貌を暴くにはまだまだ時間が必要そうです…。
今後の研究成果が楽しみです!!
それではまた次の投稿でお会いしましょう♪
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