クラゲとは?

皆さんはクラゲと言われてどのような生き物を想像するでしょうか?
・ゼラチン質な見た目
・夏に発生し、毒を持った厄介なやつ
・大量発生し、漁礁被害をもたらす厄介なやつ  etc,,,

人によって様々なイメージを持っているかと思います。

このページでは、 「クラゲってそもそもなに?いつからいるの?クラゲにはどの様な種類がいるのか?」  をざっくりとお話していければと思います。

 クラゲ誕生の歴史 

実はクラゲの歴史はとても古く、5億8000万年前のエディアカラ紀から生息していた記録が地質調査から明らかになりつつあります。(私たちホモ・サピエンスは25万年前に生まれたことを考えると、如何に彼らが地球上における先輩であるかがよく分かりますね。)しかしこの時期の地層から発見されている化石の多くは「印象化石」と呼ばれる、見た目が地層に影の様に残っているだけのものが多く、「クラゲではなく、違う生き物なのではないか?」と言われたり、未だ議論が尽きない状況となっています。しかし、この時期からクラゲの仲間である刺胞動物の仲間の化石が多く発見されていることから、彼らの歴史は限りなく古い事は間違いありません。

その後、5億4000万年前から始まったのカンブリア紀に入ると、現在も海や水族館で見る事ができるクラゲたちが化石として発見される様になりました。驚くべきことに、化石で発見された仲間の多くが、今日も海を漂って生きています。これだけ大量絶滅を繰り返してきた地球上で生き残ってきたクラゲ。見た目とは裏腹に、本当にたくましい生物です。なおこの時期の地層からは、今日も海岸などで見られるクラゲが大量に打ち上げられてできたと思われる化石なども発見されており、私たちが生まれる遥か前から、海岸にクラゲが大量に打ち上がる光景が広がっていたと考えられています。個人的には、5億も生きているんだから、学習して打ち上げられない様に進化しなさい!!と思ってますが、そこもクラゲの可愛い所かもしれませんね。

日本においては、最古の記録で古事記にてクラゲを用いた記述がされています。

「海月なす漂える国」、「海月なす漂へる国土」、「海月の如く漂へる」

様々な形でクラゲが使われています。当時は【クラゲ=フワフワと漂い、固まっていないこと】という形で使われる事が多く、古事記内では、地球や大地が神様によって作られている過程の様子で使われていました。また今日ではクラゲを漢字で書くと、「水母、海月、水月」と表記しますが、当時は「久羅下」と表記される事もあったそうです。いずれにしても、日本においては古事記が記載された1300年前以上昔から、認知されていた事が分かります。

いかがだったでしょうか?クラゲの歴史について少しは詳しくなれたでしょうか?
それでは次に、現在生息するクラゲに話を戻し、「クラゲとは何か?」についてお話していきます!

 クラゲとは何か? 

まずはみなさん、こちらの二枚の写真をご覧ください。

ここに映る2種類は、日本沿岸に広く分布し、共にクラゲの名を持つ2種になります。
現在、「クラゲ」は「世代交代を浮遊生活中に行う種の総称」として広く指す言葉として用いられています(諸説あり)。

実際に上記の2種類は、「〜クラゲ」と名前はついていますが、その生活スタイル(以下、生活環)は大きく異なります。
左側のミズクラゲは、イソギンチャクの様に岩場などに付着し生活する時期(着底期)と、水温や日照など、特定の条件が揃うと変態を経て姿を変え、皆さんが水族館でよく見かける姿(浮遊時期)となり、浮遊する2種類の生活史を持ち合わせます。多くのクラゲはこの様に、着底期に無性生殖を行い、姿を変えたの浮遊期に遠方に移動し、種を残すために有性生殖を行います。よって、皆さんが水族館で普段見ているものは植物で例えるならばいわば綿毛のようなものになりますね。
一方で右側のタイプのクラゲは着底期を持ち合わせませんが、同じく浮遊しながら子孫を残します。

しかし、定義がより細かな狭義のものになると彼らは全く別の生き物として区別されます。
それが「刺胞」と呼ばれる細胞を持っているか、否かです。

刺胞とは?
刺胞(しほう):クラゲを含め、刺胞動物というくくりに入る生き物が持つ特徴な細胞です。餌を捕まえたり、敵から身を守ったり、海藻など特定の場所にくっつくために使用したりと幅広く用いられています。私たちがクラゲに触れて痛いと感じるのは、この刺胞が勢いよく飛び出し、私たちの表皮を貫通し、毒を注入されることによって起こる痛みです。(この細胞に関する詳しいお話はこちらの記事にて)
それでは刺胞が持っているか、否かで先ほどの2種を分類してみましょう。

ご覧の通り、右側ののクラゲと名の付くこのクラゲはクラゲとはみなされません。
この様に、一重にクラゲと名のつく生物でも定義の仕方によって、「クラゲでは無い」とされる事もあります。
これは仮説ですが、英語でクラゲは「jellyfish」、日本語に直すとゼラチン質プランクトンとなります。
もしかすると、この辺りの定義が混同してしまった背景には、 外見の特徴を最優先して名づけられた 事による弊害かもしれません、、

この様に「クラゲ」とは、定義によって様々なくくりを持つ生物です。
それでは最後に、現在生息するクラゲの種類について簡単に触れながらこのコーナーを終了したいと思います。

 クラゲの種類 

これまでの研究によりクラゲは、刺胞を持つもの・持たないもの含め、世界中でおよそ3,000種類以上が生息しているとされています。大きさは、1mmに満たないものから触手の先まで合わせると10mを超えるものまでと様々で、今も毎年多くのクラゲが新種登録されています。それではまず、刺胞を持つクラゲにはどんな種類のクラゲがいるかみていきましょう。
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刺胞動物門のクラゲ

正直な話、私は右下のクラゲを自然界で発見した時、クラゲであるとは思いませんでした💦
現在も多くの研究が進められていますが、見た目や遺伝学的観点から、現在刺胞動物門は4つの綱に分類されています。この中でもヒドロ虫綱は小型の種類が多いため、水族館や海岸で見る機会は少ないことから馴染みが薄いかもしれませんが、4つの綱の中では最も発見種数が多いグループになります。もしヒドロ虫綱を沢山、この目で観察してみたい!!と思う方は、ぜひ一度海に出て、採集活動をしてみましょう!!必ずと言って良い程、捕まえる事ができます。

 クラゲの採集方法に関する記事はこちらから! 

それでは次に、刺胞を持たない種類のクラゲ、有櫛動物門に属するクラゲについて紹介します。
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有櫛動物門のクラゲ

もしかするとクラゲと言われて此方を想像してしまう人も少なくないかもしれません。
これらの最大の特徴はなんと言っても、刺胞を持たない事。そしてミズクラゲの様に拍動して遊泳するのではなく、櫛板(しつばん、くしいた)と呼ばれる、繊毛が数万本も束ねられてできたものをなびかせて遊泳する事にあります。

こちら櫛板の動きをハイパースローで撮影した動画になります。規則正しくなびく姿がみて取れるかと思います。
誤解されている方が多いのでこの場で訂正致しますが、一部の有櫛動物門に属するものを除き、彼らのこの美しい虹色の輝きは、発光ではなく、光の反射によるものです!よって採集した際にはぜひ、様々な角度から光を当ててみてください。様々な色を反射しながら遊泳する姿を見る事ができますよ!!

みなさん、いかがだったでしょうか?
この記事を読んで、「もっとクラゲについて知りたい!!」と思ってもらえたら嬉しいです^^
それではまた次の記事でお会いしましょう♪